Q:当社では、労働者が65歳になると定年で退職するのですが、希望者については再雇用を行い、契約期間を1年とする有期労働契約を締結しています。
このとき、労働者がさらに希望すれば、契約を更新することができ、最大5年、すなわち70歳までは働けることになっています。
ところで、有期労働契約を更新し続けて、通算の労働期間が5年以上になると、その労働者には無期労働契約への転換を申し込む権利が発生すると聞きました。
有期労働契約を更新するという点は、定年後の再雇用の場合も同じだと思いますが、そうすると70歳以上でありながら無期労働契約を締結している
労働者が発生することになるかと思います。しかし、当社では危険な業務をすることもあるので、定年後の労働者から無期労働契約への転換を申し込まれても、勤務が難しいと思います。
そこで、以下の点について教えてください。
1.無期労働契約への転換権は、定年後の再雇用の場合にも発生するのでしょうか。
2.仮に発生する場合、それでもなお無期労働契約への転換をしないようにすることはできるのでしょうか。
A:1.無期労働契約への転換権は、定年後の再雇用の場合にも発生するのでしょうか。
定年後の再雇用の場合、多くの企業では有期労働契約を締結することになると思います。この有期労働契約は、定年後の労働者であっても、通常の有期労働契約と何ら変わるものではありません。
したがって、無期労働契約への転換権は、定年後の再雇用の場合にも適用されることになります。
つまり、定年後有期労働契約を締結し、更新され続けた結果として労働期間が5年を超えた場合、労働者は無期労働契約への転換権を得ることになります。
ただし、Qの事例では、有期労働契約の更新は最大5年とされています。無期労働契約への転換権は、契約期間が5年を超えたときにはじめて発生しますので、
5年で契約期間が終了する場合には転換権が発生しないという事になります。そうすると、有期労働契約を5年で雇止めとするのであれば、労働者は転換を申し込むことができないということになります。
したがって、無期労働契約への転換権は、定年後の再雇用の場合にも適用があり、定年後有期労働契約の期間が5年を超える場合には、労働者は無期労働契約への転換を申し込むことができるといえます。
2.仮に適用される場合、無期労働契約への転換を防ぐ方法はないのでしょうか。
有期労働契約の期間が5年を超えた場合に、無期労働契約への転換権が発生するので、端的に言えば5年で労働契約が終了することが必要となります。
契約期間満了とともに退職とする場合には、雇止めが適法に行われる必要があります。
具体的には、再雇用にかかる労働契約を締結する際に、あらかじめ「〇歳まで雇用する」ということをきちんと労働者に説明したうえで、同意を得るのが望ましいです。
同意を得られた場合は、労働契約書にその旨を明記しておくようにします。これは、労働者にとって労働契約が更新されることが期待できるような事情がある場合に、
雇止めをしてしまうと、当該雇止めは無効だと解される可能性が高くなるためです。そのため、更新の有無について当事者間で明確に合意しておく必要があるといえます。
なお、定年に達した後引き続いて雇用される労働者がいる事業所においては、適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けることができれば、
定年後引き続いて雇用される期間は無期転換申込権が発生しない扱いとなる特例措置もあります。
この特例措置は、「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」によって定められたものですが、定年後の労働者を再雇用する機会が多い企業であれば、特例措置の利用を検討することも考えられます。
厚生労働省のホームページには、無期転換制度について紹介するページがあり、そこでは特例措置についての資料も見ることができます。
興味のある方は、ぜひ調べてみてください。